株式会社バンダイナムコホールディングス 露木項治 様

うざいけど、ありがたい!細かな対応と深い理解

日本のエンターテインメント業界を牽引するバンダイナムコグループ。国内外で約100社のグループ会社を抱える組織で、グループにおけるサステナビリティ、リスクコンプライアンス、情報セキュリティの事務局長を務めるのが露木項治氏です。ご本人曰く「素人」だった情報セキュリティの組織改編の際に必須であったポストの採用でお付き合いをさせていただきました。露木氏の上司が石元と旧知の仲だったことから始まった、非常に限られた短期間での採用。無事に採用へ漕ぎ着けるまではどのように感じられていたのでしょう。露木氏の個人的キャリアから、今後の展望までを含めお話を伺ってきました。

株式会社バンダイナムコホールディングス

2005年に株式会社バンダイと株式会社ナムコの経営統合により誕生したバンダイナムコグループの純粋持株会社。バンダイナムコグループは、パーパスである「Fun for All into theFuture」のもと、家庭用ゲームやネットワークコンテンツなどのデジタル事業、玩具や模型などのトイホビー事業、映像・音楽コンテンツなどのIPプロデュース事業、アミューズメント施設などのアミューズメント事業といった幅広い事業を国内外で展開するエンターテインメントグループ。

露木 項治(つゆき こうじ)

株式会社バンダイナムコホールディングス 経営企画本部 サステナビリティ推進室 ゼネラルマネジャー。
1992年バンダイに新卒入社。玩具営業、アパレル事業、玩具事業ゼネラルマネジャーを経て、2017年にバンダイナムコホールディングス総務部へ。2022年より現職。

「なぜおもちゃ会社?」の新卒から、「なぜ総務?」の今まで

—— 露木さんは新卒でバンダイに入社されたそうですが、元々ご興味のあった業界だったのでしょうか?

露木氏:もともとおもちゃは好きでした。バブル期の就職活動なので、営業職であればどこかに入れるとあまい考えを持っていました。どうせなら身近で好きなものを売るのがいいかなと玩具業界を選びました。当時は他業界で人気企業がたくさんあり、玩具業界はあまり見られていなかったですし、バンダイ自体もそこまで大きな会社ではなかったので、周囲からは「なぜ?」と不思議がられていました。

—— ご入社されてからはどのようなお仕事をされてこられたのでしょう?

露木氏:92年に入社してからは札幌営業所に玩具の営業として配属されました。3年半ほどして、営業所の閉鎖と共に東京へ戻りました。その後、アパレル事業にて生産から営業までトータル的に見るポジションを経て、再度玩具事業に戻り、幼児向けの玩具を扱う部署を3年間担いました。営業を統括する部署を1年経て、グループ管理本部の総務部を担いました。

—— 異動は希望だったのですか?

露木氏:1mmも希望をしていませんでした。正直「営業で何かミスをしたかなぁ?」と思ってしまって(笑)。内示を頂いた際に、理由を尋ねたら「いいから、とりあえずやりなさい」と言われました。

災害などの危機管理と情報セキュリティを統合。
でも情報セキュリティについては素人。さて…

—— 総務といってもさまざまなお仕事がありますが、異動時に求められていたのはどのようなお仕事だったのでしょうか?

露木氏:不動産関係の仕事もありましたが、メインはリスクマネジメントです。いろいろ整えるべきこともあったので、そこを徹底して整えることを求められました。「これ、10年くらいかかるからさ」という言葉と共に(笑)。

まずは自然災害時などのリスクマネジメント(危機管理)を担当しました。東北の震災時には、特に社員・家族の命が最も重要で、事業が止まってしまうのは仕方がないという考え方をしました。我々の事業はライフラインではないので、まずは社員・家族の命が大事という事です。しかしながら、事業も続けていかなければなりませんので、そのバランスや優先度を整える必要がありました。

—— そこからさらに情報セキュリティも担当されるようになられたのはきっかけがおありだったのですか?

露木氏:特に何か出来事があったわけではないのですが…。今まで、私が担当していた自然災害などの危機管理は総務部で行い、情報セキュリティ対策は情報システム部が行っていました。しかし両方とも同じリスクとして捉えられるのに、それぞれが別部隊として管理していることに立て付けの気持ち悪さを感じ、一緒にしてわかりやすくしては?とホールディングスの上層部に提案しました。

上層部も「それはそうだな」となって、2022年からまとめることになり、提案したのだからということで私が統括することになったのです。

とはいえ、情報セキュリティに関して私はド素人です。上司からも「誰か採用していいから」と言われ、責任者として動いてくれる人を探し始めました。

—— 石元がお手伝いさせていただく前にも、採用活動はされていたのですか?

露木氏:会社の慣習的に、現場のことは現場がよくわかっているからと、GM(部長)にはある程度人事に対して裁量が与えられていて、GM同士の話し合いで人の異動を決めることもありました。そのため、最初はグループ内から適材を探していたのですが、比較的新しいポジションであることもあって、なかなか見つかりませんでした。

初対面で帽子!「そうきたか!」と、すぐ打ち解ける

露木氏:社内で探すことに限界を感じた頃に、当時の上司から石元さんを紹介されました。

—— 上司の方と石元は古いお付き合いだったのですよね。どんな人だとお聞きになっていましたか?

露木氏:「とにかくよくしゃべる人。会ってみればわかるから」と聞いていました。実際に石元さんに会ってみると、初対面なのに帽子をかぶってきていて、「そうきたか!」と思い、「さすがですね」とツッコミを入れてしまいました。私は感覚で動くタイプなのですが、同じようなタイプなのか、すぐに友達のようになりましたよ(笑)。

—— なかなかな初対面ですね(笑)。その後実際に仕事を始めてみてどうでしたか?

露木氏:初対面がそんな感じでしたので大雑把な人だと思ったのですが、実際はとても細やかに仕事をする人でした。とにかく「どんな人が必要」「何が足りていない」「何をやろうとしている」「どんなチーム」など「ここまできくの?」と思うほど我々を深く理解する為にご質問をもらいました。

2〜3人の方とお会いしたと思いますが、結果、重要視していたマネジメント経験があって、体育会系な我が社にフィットする人が採用できました。最後の決め手は人柄の部分ではありましたね。

—— これまでグループ内での適材確保以外に人材エージェントの活用経験もお有りかと思いますが、他社と比べてジェムストーンらしさというとどういったところでしょうか?

露木氏:一言でいうと「グイグイ」ですね。夜中にメールが届き、1回で済むのでは?といった内容ものが2〜3回に別れてきたりして、うざいこともありましたが、それがありがたかったですね。こちらがいう前にいろいろ送ってきてくれていましたし。

候補者の方の性格や経験も汲んで、マッチングするか常に考えてくれているのだろうなと思いながら、私はメールを受け取っていましたね。

今回は特に既に組織改編が決まっていて採用活動期間が短く、石元さんとも期間の定まった契約だったこともあったと思いますが、まさに「グイグイ・ガンガン」でした。

どんな文脈でも活躍できるプロ集団
会社のファンを共に作っていく

—— 無事採用された方の働きぶりはいかがでしょうか?

実は、その方の入社後すぐにセキュリティで問題が起きてしまったのですが、彼のおかげで乗り切れました。本当に救われましたね。

決して声の大きい方ではないのですが、とにかく行動してくれる方で、権限をほぼ渡しているのですが、提案も的確で、ホールディングスの上層部からの評価も高いです。現在、彼には私のような素人が来ても困らないような仕組みづくりを頑張ってもらっています。

—— ホールディングスも含めて、今後の人材調達はどのような方針なのでしょうか?

露木氏:おかげさまで、バンダイナムコグループは売上が1兆円規模に成長してきています。しかし、この成長にコーポレート部門(管理部門)の人材が追いついていない状態と考えています。

コーポレート部門の業務(経理・総務・情報システム・人事等)は、情報セキュリティの責任者として採用した方のように、各分野の専門性を持った方が多く必要です。

—— なるほど。専門性以外にも重要な要素はありますか?

露木氏:グループのパーパスの重要な要素として「つながる」「ともに創る」というものがあります。事業を縁の下で支えるコーポレート部門は、それぞれ専門分野のあるプロではありますが、数多くある関連会社のどこへ行っても、その会社で「つながり」「ともに創れる」ように、各社に馴染んで力を発揮しなければいけないと考えます。グループ会社も100以上を数えるので、いろいろな会社での経験も重要になると思います。

「管理部門は別」というようにみられることが多いですが、つながっていないと事業側も何もできないよとは常々いっていて、個人的には Back Office ではなく Middle office という意識を持っています。

求める人材像は、エンターテインメントを世の中に発信し、世の中にいるファンと一緒になってそれを楽しめる人です。これは管理部門であっても同様で、ファンとつながり、ともに創っていける人を今後も増やしていきたいですね。

聞き手/ライター:大倉奈津子